クライミングロープのストラップ (その2)

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カメラのストラップに
山岳用のロープ(ザイル)を転用するという昨今の流行に興味を持ちながらも、カメラ用品として売られているストラップの価格を高すぎると感じた。そんなワケで、山岳用品店に行けば誰にでも切り売りしてくれるザイルを入手して、ストラップを自作してみた。でも、ザイルって山中で目立たないと命の危険があるからなのか、目立つカラーリングのものばかり。もっと渋めの色味のアイテムを使いたい。というのが前回までのあらすじ。

まぁ、使ってみればビビッドな色使いのザイルも悪くないかも。と思いつつ、最近では街中に山岳用品店を見つけると飛び込んで「ザイルの切り売りしてもらえますか?」と闇雲に尋ねまわり「こちらにございます」と言われると申し訳なくなって好みとは違う色使いのザイルを何となく買ってしまったりして、このままストラップにしても使わないよなぁ。と、少々持て余し気味の品物を思い切って染色してみることにしました。

そもそも1mの単価が小売りでも数百円というザイルが材料ですから、市販の染料を使うのはもったいない。それに、元の素材に上塗りするような仕上げではなくて、もうすこしナチュラルな感じで経年変化したみたいな風合いを目指したいので、身の回りのもので染めてみることにしました。

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飲み残しのコーヒーで
渋い色合いにザイルを染められないだろうか? という思いつきでザイルを漬け込んでみたら、結構いい感じになったのです。でも、そのままでは色落ちしそうなので、色素を定着させるべく、一般的な草木染めのプロセスを踏むことにしました。色素の元はコーヒー。それを化学的に定着させるのに硫酸アルミニウムカリウムを使います。名前が怖いですけど、ナスの漬け物の色を鮮明にするのに使う、スーパーで売っている“焼きミョウバン”のことです。染める本体が絹であればタンパク質を含有しているので、そのままでも色素が強く定着するのですが、あいにくザイルはナイロン製です。そこであらかじめタンパク質を含浸させます。牛乳でも大丈夫らしいのですが、乾燥したときの匂いも考えて今回は豆乳を採用しました。

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何ということでしょう!
ヨーロッパの移動式遊園地の屋台で売られているキャンディーみたいな派手な色使いだったザイルが、彩度を抑えた渋みのある色合いのカメラ用ストラップになりました。これなら悪目立ちしないですよね。この劇的ビフォーアフターには、タンパク質の含浸、乾燥、コーヒー染め、媒染そして乾燥という手仕事が必要ですが、材料に必要な費用はごく僅かです。どうやらコーヒーはインスタントでも染められるらしいのです。

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とはいえコーヒー豆は
奮発して、それなりに本気の焙煎をしているものを選んでみました。たっぷりとミルで轢いてコーヒーをドリップし、美味しいからと全部は飲み干さずに残しておいて染色に使います。コーヒー豆の銘柄は、迷わずキリマンジャロ。アフリカ最高峰を間近に見る農園で作られたコーヒーで染めた、マウンテンロープのストラップ。染めた後も、かすかにコーヒーの香りが残っているのもいい感じなのです。