8ミリレンズ再起動

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某カメラ雑誌の編集部で
見かけた極めてレトロな映画撮影機。聞くところによると長らく解析記事でお世話になっていたT大学の研究室の片付けで出土した不要品とのこと。手にとらせてもらえばズッシリと重く、3本のレンズを回転させることで画角を換えて撮影ができる仕組み。動力はゼンマイで、露出はセレン光電池によるメーターの値を読み取るマニュアル式。おおむねエコで継続可能性に優れた映画撮影機です。興味しんしんで操作していると「井上さん、これ持って行きますか?」と言ってもらえたので、ありがたく頂戴することにしました。

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こうして入手したアルコ8という名前の8ミリ映画撮影機。3本のレンズは、いずれもF1.4という明るさ。この数字が小さいほど光を集める能力が高く、大口径レンズと呼ばれます。昔のフィルムは感度が低かったので、レンズに明るさが求められていたのだと思います。で、アルコ8で映画を撮ろうとすると、幅16ミリのダブル8規格フィルムを入手して、それを現像してくれる所を探す必要があるのですが、それって結構大変です。安直な方法としては、デジカメにこのレンズをくっつけて撮影してみれば、何となく気分的には落ち着くのではないかと思った次第です。

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珍しいレンズを
デジカメにくっつけて遊ぶ。そういう趣味が実は全世界的に広まっておりまして、デジカメのマウントと珍しいレンズの間をとりもつマウントアダプターなるものが数多く生産されています。アルコ8のDマウントと、8ミリ映画撮影機のフィルムサイズに近い撮像素子を持つペンタックスQというデジカメのマウントを仲介してくれるアダプター、ありました。カメラには電子接点がズラリと並んでいますが、レンズとの電子的な通信は一切せず、単純にくっつけるだけなのですが、それでも写真は撮れます。

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はい、これが装着した状態です。ペンタックスQは、手のひらサイズのレンズ交換式デジカメ。手乗りインコみたいな可愛らしさのあるカメラです。アルコ8の3本のレンズのうち、サイズ的にいい感じなのは標準レンズの13ミリ。広角の6.5ミリはレンズのサイズが大きいしピント調整が無く、望遠の38ミリだと画角がフルサイズのカメラに換算して200ミリ程度で扱いがむずかしい。そんなワケで、13ミリの標準レンズで撮ってみることにします。

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シネ・アルコ13mm F1.4にて撮影。

 

そもそもスマホのカメラで写真は撮れますよね。それなのに古くさい8ミリ撮影機のレンズを苦労して使う理由って何なのでしょうか? スマホの写真と何か違うことができるかと言えば、大口径レンズの特性としてピントの合っていない部分が大きくボケる。ということがあげられるかと思います。それに加えてクッキリハッキリという価値観とは逆の、適度なユルさも魅力です。レンズの明るさを頑張って大口径にしたぶん描写の性能は落ちてしまって、期せずして頑張り過ぎない雰囲気の写真が撮れるのだと思います。