CREEZAN

シャブリ! シャブリ!! シャブリ!!!−2−

 

エリック・サブロウスキ氏はブルゴーニュワイン委員会公認の“シャブリ・エデュケーター”。ブルーのクラシカルなシトロエン2CVでブドウ畑やドメーヌを回り、屋外レクチャーや試飲を通してシャブリについての基礎を学ぶツアーを催行している。造り手と言葉を交わしながら酒庫のなかで試飲したり、車のルーフトップも窓も開け放ち、風に吹かれてブドウ畑のなかを走ったりするのは、実に素敵なひとときだ。

_001
パリ観光のついでに足を伸ばして訪ねる

ワインツーリズム(ワイン観光)という旅のスタイルはどのくらい日本で認知されているだろう? 『サイドウェイ』というアメリカ映画がヒットし(日本版のリメイクも制作された)、それでワインツーリズムの存在を知ったという人もいるかもしれない。日本でも近年、山梨や長野あたりではワイナリービジットや試飲を楽しめる醸造所が増えている。ワインは産地の気候や風土、人の営みをブドウの醸造酒というかたちでボトルにとじ込めたものだ。産地で地ワインを飲むと旨いのは、ボトルの内外がまさにつながっているからだろう。一度産地を旅すると、それからはどこでボトルを開けようとも、飲み手はグラスのなかにその土地の風景をつぶさに見ることができるようになる。そうなると、同じワインを飲んでも味わいが増幅されること間違いなしだ。

_002
_003

シャブリには観光客の訪問を受け入れているセラーが120軒ある。その多くが試飲付きの施設内ツアーを行っている(有料・無料あり)。造り手の中には、歴史的なシャトーを擁し、それを観光客に宿として開放しているところもある。

_004
_005

ワインと関わりの深い歴史遺産を訪ねてみたいという人にはシャブリ村から北へ30分ほどのドライブで行けるポンチニー修道院をお勧めする。12世紀に基礎が造られたこの修道院には最盛期で400人もの修道士が暮らした。質素勤勉を宗に互いの会話も禁じて祈りの暮らしを貫いたシトー派の僧たち。彼らにとってブドウ栽培とワイン造りは神への忠誠と同義だった。その装飾を排した聖堂の中に立つと、シャブリのキリリと引き締まった味わいの根底にあるものが感じられる気がするのだ。

_006
_007

シャブリはパリからわずか2時間ほどのドライブで訪ねることができる。パリに5、6泊の旅程で行くとして、そのうちの1、2泊をシャブリで過ごすというのは、旅のアクセントとしても悪くないプランである。

_008

〈ワイナリー紹介〉
Jean-Marc Brocard ジャン・マルク・ブロカール
ジュリアン・ブロカール氏は有機農法を積極的に取り入れるなど、シャブリ全体を牽引する存在。ワインツーリズムにも力を入れており、2013年、フランスを代表するワイン雑誌から「ワインツーリズムのトップ」に選ばれた。ワイナリーからほど近いサン・シル・レ・コロン村でB&Bを経営。

_009
_010
_011

La Meulière ラ・ミュリエール
1779年から9代続くワイナリー。現在はニコラとヴァンサンのラロッシュ兄弟が経営。兄が醸造、写真の弟が栽培を担当している。スラン川右岸の4つのプルミエ・クリュに畑を所有。収穫を手摘みで行うなど非常に丁寧な造りで、テロワールを忠実に表すシャブリを造る。プルミエ・クリュのモン・ド・ミリューはこの造り手を代表するクリュ。

_012
_013

Domaine Alain Geoffroy ドメーヌ・アラン・ジョフロワ
古木のブドウで造られるシャブリは複雑味がありパワフル。醸造所の一角にオープナーやワイン造りに関係する機具などを集めたミュゼを開館。オープナーだけで約3000点。19世紀に造られたものなど貴重なコレクションは歴史的にも価値がある。

_014
_015

Domaine Laroche ドメーヌ・ラロッシュ
グラン・クリュのブランショはミネラル感がひときわ強く、男性的。細身だが決して切れることのないしなやかさを持つ。マダムのグェネル・ラロッシュさんはブルターニュ出身。ワイナリーが経営するブティック・ホテルの内装は彼女が一手に手がけた。ブティック・ホテルは15世紀の水車小屋を改装したもの。
全7室。スイートからはグラン・クリュの畑が望める。

_016
_017
_018

Château de Béru シャトー・ド・ベル
ド・ベル家はこの一帯を統べる領主だった家柄。クロ・ベルはモノポール(単独所有の畑)のブドウで造ったもの。マダムのローレンス・ド・ベルさんらの住まいでもあるシャトーの一部をB&Bとして旅行者に開放している。

_019
_020
_021

※『シャブリ! シャブリ!! シャブリ!!!』はエールフランス航空/KLMオランダ航空機内誌「ボン ヴォヤージュ」2013年10、11、12月号に掲載された「シャブリを巡る、ワインツーリズム」を改題、加筆・再編集したものです。記事や写真の無断転載はご遠慮ください。

Photographs by Taisuke Yoshida
Special thanks to BIBV(Bourgogne Wine Boad)

Yasuyuki Ukita • 2017年10月2日


Previous Post

Next Post

Copyright © 2021 / CREEZAN