2002年のライカ、DIGILUX 1

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デザイン物件という
言い回しが一般的なのかどうか知りませんが、私の周辺ではデザインがすごく魅力的なので、その他の要素を差し置いても欲しくなってしまうプロダクトを表す用語として使われています。その他の要素とは、販売価格であるとか機能などですね。すごく高いけれど見た目が格好いいから欲しい。とか、機能はそこそこだけど、見た目が格好いいから欲しいなどなど。要するにプロダクトデザインの力で、気分を高揚させてくれるモノのことです。

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今さらながら、手に入れたライカの
DIGILUX 1というデジカメがコレです。発売は2002年の春。かれこれ15年ほど前になります。このカメラは、パナソニックのDMC-LC5というモデルをベースにして設計されています。元ネタになったパナソニックの見た目とは大きく異なり、潔い直線と円弧でシンプルに描いたレンダリングをそのまま製品にしてしまったような雰囲気です。日本のカメラメーカーに散見される、会社の中で何度も会議をくり返すうちに製品のカタチがデザイナーの本意とは違う方向にあちこちから歪められた痕跡が見当たらないのが気持ちいい。

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伝統的なライカの雰囲気として
黒塗りのライカM3にクローム仕上げのデュアルレンジ・ズミクロンを近接撮影で使うときのメガネと一緒に装着した感じなんかをDIGILUX 1は想起させてくれます。往年のライカ愛好家に向けたビジュアルメッセージの元ネタとしてライカM3をブツ撮りしてみましたが、古いライカって格好いいですよね。

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似たようなアングルから
DIGILUX 1とオールドライカを見比べてみると、雰囲気を継承しながら高度に抽象化した線と面で再構築していることが分かります。こういう行為こそデザインの本領なのではないかと思うのです。ちなみにDIGILUX 1をデザインしたのはベルリンで活動するデザイナーのAchim Heine氏。ライカでは特に新機軸のカメラに外部デザイナーを起用する例が散見されます。2002年当時はライカに専門職としてインハウスの工業デザイナーは存在していなかったそうです。

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余裕のあるボタンの配置とか、
何だか後ろ姿も格好いいですよね。液晶モニターには、折り畳み式のフードを装着させることが可能で屋外での使用時に役立つ仕組み。実際にこの当時のバックライト液晶はパワー不足で折り畳み式フードを使ったとしても直射日光の元では視認することが困難だったりします。そこで液晶モニターの上にある丸い覗き窓から光学式ファインダーを見てフレーミングしたりするのですが、厳密に構図を組むのには適しません。15年前のデジカメってこんなだったんだと、21世紀の技術の進歩を実感できたりもします。

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デジタル製品の寿命を
何年と捉えればいいのか? これは現代的な生活を送る私たちが常に感じている問題なのではないでしょうか。特にデジタルカメラはフィルムカメラ時代から受け継がれる耐久消費財としての側面と、コンピューターの周辺機器としての役割という二律背反の要素を内包しています。見た目は極めて魅力的だけど、デジタル製品としては機能に劣るDIGILUX 1。このカメラが登場した2002年の時点では、影も形もなかった東京のランドマークを撮ってみました。電波塔のライフサイクルと比較するのは無謀ですけど、もうすこしの間このカメラを使ってみようと思います。