カセットテープ・ラブ

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雑誌「ENGINE」の
クルマではない何かを取り上げる巻頭コラムで、このあいだカセットテープにまつわる状況を取材しました。中古レコードならぬ中古ミュージックカセットをメインに取り揃える東京・恵比寿のお店には、カーステレオがカセット仕様の旧車で乗り付けてくる人から、カセットを触るのも聴くのも初めてという学生さんまで幅広い層で賑わっているとのこと。また、新装した新宿のBEAMSでは、クールな日本製品の代表として整備済みビンテージラジカセを販売中。

カセットテープがリアルタイムの世代として、この活況に刺激されてしまったんですね。実家に戻って、かつて録音したカセットを何本かもってきて、しまい込んであったSONYウォークマンプロフェッショナルで再生してみると、何だか音が太くていい感じです。そうして気分よく聴いていたら、ズッ、ズッ、ズウゥゥーーンンン‥。と急にピッチが下がって音が途切れたので見てみるとテープが巻き込まれてるっ! ゴムのローラー部をエタノールで清掃しても症状は再発。どうやら内部機構のベルトやプーリーが限界みたいで、修理するにしても結構なコストがかかりそう。一転して悩みモードに落ちたのでした。

そんな話を聞いていた
友だちのキジマ君が「そしたら、D5Mいる?」と、あまりにも唐突な提案。それはもう「欲しい!」ですよ。SONYの誇るカセットデンスケの最終機種にして最高峰。1980年代の発売から世紀をまたぎ25年間も販売されていたロングセラーの名機であります。憧れのD5Mに比べたらボクのウォークマンプロフェッショナルなんて残念ながら格下のモデルなのです。

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はい、これがキジマ君の送ってくれた実機です。冒頭の写真は、D5Mの象徴とも呼べるアナログVUメーター部のクローズアップなのでした。本機にマイクを接続すれば街頭インタビューとか蒸気機関車の生録音とかが即座に可能。電源は本体に単1電池を2本。うまく動いて2時間強というスタミナの弱さと引き換えに、すこぶる高音質というのが真にSONYらしい1台です。

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それに加えメタルテープに
対応しているのがD5M のMたる理由。たぶん30年くらい前に奮発して買ってメタルテープに録音してあったキレッキレのファンクを再生すれば、さすがに音がいい! ガチャッとFWDスイッチを押し込めば、30年前の気分がありありと再生されます。カセットって、これは立派なタイムカプセルですね。

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ミュージックテープを
パッケージソフトとして買う。という習慣は当時なかった(インドでタブラの教則カセットを買ったことはある)のですけれど、同居人が昔に買って現在も捨てずに手元に置いておいたトーキングヘッズのカセットを再生。テープ特有のコンプレッションのかかった音質が何だか妙に気持ちいい。こうなると実家に残したままのカセット約200本を本格的に回収して聴き直したい気分に。

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そうなると、大切なのは機材のメンテナンス。D5Mと一緒にキジマ君が送ってきてくれたのは、マイクロSDに入れたD5Mのメンテナンスマン向けのサービスマニュアル、いかにもテープに入っていそうな音源を編集録音してくれたデモテープ、そしてカセット型のヘッド消磁器とクリーナー。この一式のおかげで、ふたたびカセット・ラブな生活を再起動して楽しみ続けられそうです。