セクシー・シンセサイザー

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昨今の音楽シーンで
1980年代のアナログシンセサイザーの音が再評価されている気がしているのは私だけでしょうか? 世の中の全ての動きと同じようにシンセサイザーなんてとっくの昔にデジタル化されています。モデリング音源という技術を使えば往年のアナログシンセサイザーの音なんかもタブレット端末の画面を指でなぞるだけでシミュレートすることが可能なのです。

でも、その元ネタとなったアナログシンセサイザーを久しぶりに引っ張り出して音を出してみると、これが何とも気持ちよかったりするものです。写真のモデルはローランドのSH-09で発売は1980年。スペック的にはオシレータと呼ばれる音源を1系統だけにして、オクターブユニゾンが可能なサブオシレータ機能を載せた廉価版でした。

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ピッチベンダーと呼ばれる
ギターだと弦をチョーキングする奏法を真似することのできる突起が鍵盤の左端に設置されています。この部分をグリップ状にして、本体を電池で駆動できる仕様にしてストラップがつくようにしたのがSH-101というモデル。1980年代初頭、東西冷戦の真っ最中に『ロックバルーンは99(99LUFTBALLONS)』で世界的ヒットを飛ばした西ドイツのバンド、NENAのキーボーディストがステージで肩から下げてました。懐かしいですねぇ。このSH-09もゴム足を改造すれば肩から下げられますが、100V電源コードを引きずりながらの演奏となります(汗)。

この機体のトリビアとしては、TR-808という今でも世界中の音楽シーンで鳴り続け(ピコ太郎も使ってました)、そのドキュメンタリーフィルムまで制作されているローランドの傑作アナログリズムマシンとサイドの樹脂カバーが同じ部品だったりします。いや、余計な話でした。

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国産シンセの両雄といえば
やはりローランドとコルグだと発言すると、当時はヤマハ派の人と喧嘩になったものです。それはそれとして、我が家に現存するもう1台のアナログシンセサイザーが、このコルグ・MonoPolyです。基本的には単音演奏する目的で設計されたモノフォニックシンセサイザーなんですけど、オシレータを4つも搭載しているから無理すると和音も出せます。とはいえ真骨頂は単音での発音で、シンクロやクロスモジュレーションなど過激な音色を作るのに欠かせない機能も載せてありました。

ちなみに、アナログシンセサイザーをコントロールする基準はオクターブ/Vとヘルツ/Vの2系統があり、コルグは後者の場合が多かったのですが、MonoPolyに限ってはオクターブ/Vでローランドと同じでした。その後ローランド創業者で本年惜しくも他界された梯郁太郎氏の発案により、デジタルシンセサイザーの通信制御共通規格MIDIが生まれることになり、アナログシンセサイザーの時代は幕を引いていくことになります。

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いずれにしても、アナログシンセサイザーの存在ってセクシーなものだと思います。その理由は、全てのパラメーターを物理的なツマミやスイッチ、コントロールホイールなどで直接操作することが可能で、制御すべき事象がパネル上に突起物として現れていることに尽きます。眺め回して、触れば音の変化として反応が即座に返ってくる。このダイレクトな双方向性は、タブレット端末でテキストを打ち込むと文章が上滑りしたようになるのと真逆の、極めて肉感的な体験なのです。