ライカへの手土産

posted in: monolog | 0

 

1

 

 

ドイツ・ウェッツラーにある

ライカカメラ本社ライツパークにて開催された、新型のレンジファインダー式デジタルカメラ、ライカM10の発表会に招待され、その模様を取材してきました。CEOやプロダクトマネージャーなど、VIPクラスの方々と対話する時間はあらかじめセッティングしていただいていたのですが、それに加えて個人的な挨拶だけでもいいから会わせてほしいと頼んでいた人物と念願かなって顔合わせすることができたのは大きな収穫でした。それは、ライカカメラ初のインハウスデザイナー、VINCENT LAINE氏。実は長いライカの歴史の中で、専任の工業デザイナーという職種は存在しなかったのです。基本的には“機能が形態を決定する”というテーゼのもとでカメラの外観は決められ、必要を感じた場合にだけ外部のデザイナーとの協業をしてきたのですが、ライカの100周年をターニングポイントとしてデザインチームが社内に形成された模様。そのなかでも元アウディに在籍していたデザイナー2名に加え、ルーキーとしてライカに入ってきたVINCENT LAINE氏に注目していたのです。

 

名称未設定 2

彼の直近の代表作としては

ライカQというモデルがあげられます。写真は日本限定モデルのライカQカーボンリミテッドエディション。往年のバルナック型ライカから踏襲される、左右のエッジが丸い円弧を描いたフォルムと、虚飾を排した端正な操作部が特徴です。トップパネルの厚さを抑えたスタイリングには新しさも感じられ、いいセンスしていると思います。ライカカメラ社のブログにVINCENT LAINE氏のことが載っているので目を通してみると、フィンランド生まれスウェーデン育ちのスカンジナビア人で、個人的な妄想で作った未来のライカのレンダリング(これが凄い完成度)が本家ライカの目にとまり、晴れてライカ初のインハウスデザイナーになったという武勇伝の持ち主なのです。

 

ブログのキービジュアルには彼がデザインした最新のライカ皮小物シリーズと一緒に日常的に使用しているアイテムとおぼしきものが写っているのですが、筆ペンに顔料インクマーカーのPOSCA、メディコムトイのフィギュアなど日本製品があちこちにちりばめられている。ライカのパスケースには、さりげなく500円札が差し込んであるし、これはもう日本のことが好きな人に間違いないです。

 

名称未設定 3

そんなワケで、VINCENT LAINE氏がライカに入って初仕事として手がけた2014年のライカ100周年ロゴがパラパラ漫画みたいにページをめくると動いて見える小粋な小冊子を手にしながら、彼に持っていく手みやげを決めました。日本の伝統柄をあしらった手ぬぐい。柄は青海波です。その理由は、彼の家名であるLAINEは、英語でWAVEという意味だから。

 

これは日本の伝統的なハンドタオルで、何百種類も柄があること。そして、この模様にはあなたの家名である“波”という名前がつけられていること。だから、あなたにプレゼントとして持ってきたことを伝えると、かなり興奮した様子で受け取ってくれました。

 

「この柄は、300年以上も前に考えられたものなんだけど、Wi-Fiのマークに似てると思わない? もちろんWi-Fiは目に見えないけれどWAVEだよね」

 

「本当だね! この模様の中からパスワードを探さなくちゃいけないね」

 

などと1本の手ぬぐいを介して和やかに会話は進み、続いて鉢巻きや頭巾など手ぬぐいの様々な使い方のレクチャーへ発展。高校の剣道の授業以来、手ぬぐいを被ったことなどなかったのですが身体が覚えているものですね。こうして日本からの手土産は、ライカ新進気鋭のデザイナーの心を打つことに成功したのでした。めでたし、めでたし。

Leica Camera
https://jp.leica-camera.com/