我、フライターグを愛す

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ヨーロッパの高速道路を
疾走しているトラックを見るのが好きです。その殆どは、日本で見かけるアルミパネルではなく、幌(タープ)で囲まれた荷台を引っ張っています。日本ほど雨が多くない気候だからか、パネルだと重くなり燃費に響くからか、あるいはタープ仕様だと税金が安いからか? 理由はよくわかりませんけれど、とにかく荷台にはタープが基本。色とりどりのタープにロゴなどをあしらったトラックを車窓から眺めながら「今のは使える」とか「いい感じの色だなぁ」とか、誰に発信することもなく一人でつぶやいています。そもそも、つぶやきとはそういうものですよね。

そんな時、アタマの中で想像しているのはフライターグのバッグのことです。スイス、チューリッヒで1990年代に生まれたトラックの使用済みタープをリサイクルして作られたバッグ。その存在を知ったのは20世紀の終わり頃で、2004年に腕時計の取材でバーゼルに通うのにチューリッヒに滞在していた際に初めて購入。それ以来いろんなモデルを手に入れては使い続けています。

特に狙っているのは、アルファベットでGと入っているもの。要するにガンダーラのGですね。フライターグのバッグは使用済みタープから各モデルのパターンに恣意的に切り出されたパーツを使用するので、基本的に同じ柄のものは存在しません。だからGとあしらわれたものが出てくるのを待つのが基本です。

リサイクル素材としての使用済みタープ市場というものは存在しないので、資材の仕入れは大変だろうと思います。主にスイスやドイツ、スペインの運送会社のもので、数年間はヨーロッパを走り回り程よくエイジングされたタープがフライターグの原材料となります。フライターグって、金曜日のことを示すドイツ語で、発音としてはフライタクだと思います。で、主にドイツ語を話すチューリッヒのスイス人であるフライタク兄弟が始めたブランドだそうで、お兄さんは自分で自動車を所有したり運転することはないとのこと。だからこそ、現代文明って高速道路と自動車が基本となっていることにリサイクル素材で一石を投じるセンスが培われたのかなぁ。などと、自動車を所有したことも運転することもない僕は勝手に共感していたりします。

このトラックのタープは
いい色してますねぇ。WEDIGというロゴの最後にGって入っているけれど、カバンにするには大きすぎるのが惜しい! とはいえ、ドイツ語で運輸を表すLogistikってgが入っているからなのか、頑張って探すとGと入ったフライターグを見つけることは可能です。そして、偶然にもLogistikの真ん中あたりの2文字をあしらってもらえればGI、すなわちガンダーラ井上のイニシアル入りも探せるかもしれません。それはまさにリサイクル素材で作られた千載一遇のアイテムなのですが、もしかしたら出会えるかもしれないという思念がフライターグというブランドへの愛着に結びついているのだと思います。